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§なぜなぜ分析のエッセンス(考え方)について 更新日 2013/9/8

 なぜなぜ分析とは、「なぜ」「なぜ」を繰り返しながら、問題を引き起こしている事象の要因を、
思いつきで挙げていくのではなく、論理的に漏れなく出しながら、狙いとする再発防止策を導き出す
方法のことを言います。(トヨタ自動車の改善活動でも使われている。)
 ただし、効果的な対策が打てる原因に辿り着くのは、結構難しいのです。以下に管理人がまとめた、
なぜなぜ分析のエッセンス(考え方)についてご紹介します。

1.なぜなぜ分析とは
 「なぜ」「なぜ」を繰り返しながら、問題事象を発生させている要因を、思いつきや勘ではなく、
 規則的に順序良く漏れなく出し切り、その中から事実に基づいて真の原因を絞り込む
分析方法
 です。(真の原因の裏返しから再発防止策を導き出す。)
 「もの作り」だけでなく、「業務・事務系」の問題事象に対しても有効な分析方法です。
  トヨタ自動車などでは「なぜなぜ5回」と表現されます。掘り下げる回数を明示することで、
 問題の原因により深く迫ることを促すためです。
 なぜなぜを繰り返して行き、最後の原因は確実で効率的な歯止めがかけられる要因でなければならない。
  実はこの「なぜなぜ分析」は、その方法が単純ですので、簡単に誰でも行うことができます。
 ただし、実際にやってみると、
  ・ポイントをマスター(しているか/いないか)
  ・問題に気付ける力量が(あるか/ないか)
  ・対象品の原理、原則を(理解しているか/していないか)
  ・現場、現実を(知っているか/知っていないか)
 によって、真因に辿り着くレベル差が、月とスッポンの差程発生してしまいます。
  →ポイントをマスターし、ある程度慣れればOK!(経験を積むしかない。)

 以下に陥り易い、失敗例を挙げておきます。
  ・「一直線のなぜなぜ」になってしまう。
    →並列要因が出てこない。思い込みの対策案や、声の大きい管理職に引張られる。
  ・深堀りができておらず、「なぜ2や3」程度で終わってしまっている。
    →ポイントをマスターしていないか、不慣れ、力量不足など
  ・メンバーに当事者や、その業務や製品に詳しい人がいないと「多分こうだろう」という要因が増える。
    →無駄な分析が発生
  ・問題発生後に時間が経ってから実施しているため、「多分こうだったであろう」という要因が増える。
    →無駄な分析が発生

 1)なぜなぜ分析のイメージ
  a) 要因系を洗い出し(その結果、枝が増える)
  b) 事実に基づいて検証する(その結果、枝が減る)
  c) 最終的に真の要因(原因)が残る(→ 対策へ)


2.「なぜなぜ分析」の真の目的
  「なぜなぜ分析」の目的は、もちろん問題事象の原因究明と恒久対策ですが、問題の発生要因の
 「見える化」(見落としていた原因を顕在化)や洞察力・発想力の訓練にもなります。
 分析を繰り返していくと、会社や自部門の弱点や、見えなかったことが見えるようになって来ます。
 真の目的は、現場の問題解決力(現場力)のUPであり、問題に気付ける力量のUP
だと思う。

3.なぜなぜ分析の留意点は次の4点です。
 1)問題点を整理し、事実に基づいて分析する。
  ・現象を正確に把握することが重要!
  ・掘り下げ前の現状把握が分析の質を左右する。
  ・現場を確認しないで原因が判る訳が無い!
  ・現象は見える形で残す。(なぜなぜ分析シートは、過去トラ情報として有効活用する。)
   事実を残す際、言葉や文章だけでなく、写真や動画で残すのがよい。(事実を把握し易い。)

 2)要因を出し切る!
   実際に対策を打つかどうかを、先に考えてはダメ!
  まずは要因を出し切り、要因を「見える化」し、末端原因に対して対策を打つかどうかは、
  リスクや効果と費用との相談になる。→見えなかった要因を、見えるようにする。

 3)複眼で分析する。(関係者が参加する。)
  ・個人の思い込みや推測だけで決め付けてしまわない事!
  ・個人的な主観で先入観が入った表現をしてしまうと、的が外れて対策すべき弱点を見いだせない。
  ・発生後できるだけ早く、当事者を参加させて分析する。

 4)原因分析で外部環境や自分達以外のことへ「責任転嫁」しない。
  ・「なぜなぜ分析」には、「責任転嫁」は禁物!
   まずは、外部環境に影響されない仕事の仕組みを考えるべき!
   ただし、本当に外部環境が「根本原因」なら、それを改善する。
   「責任転嫁」の結末は→最終原因が全て「社長が悪い」になってしまう。

   ただし、インプット(情報、物、材料)に問題がある場合や、他のプロセスに
   原因がある場合は書いておいて、見える化はしておくこと。

   そして、まず自部門で流出防止や検出が出来るような恒久対策案が打てる所まで掘り下げる。
   →対策案は出たが、そのために多くの工数や費用が掛かる場合や、他のプロセスからの
   影響が大なら、やはり他のプロセスに改善を要求すべきである。
  (その要因のなぜなぜ分析を依頼する。)または、最初から「なぜなぜ分析」に参加して
   もらう方が良い。


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4.なぜなぜ分析のポイント
 1)出だしの「なぜ1」には、根本的な要因を書くようにする。
   問題事象が必ず発生する、直接的な動作や事象を書くこと。(「〜し忘れた」はダメ)
   ・モノが破壊された。→なぜ? そのモノの強度を上回る応力が加わった。
   ・注文個数を間違えた。→なぜ? 注文書に間違った数字を書いた。
   ・水が漏れる。→なぜ? 必ずどこかに隙間(穴)がある。
  また、「発生要因」(作り込んだ要因)と「流出要因」(見付けられなかった要因)の2つを
  「なぜ1」に取上げるとよい。
  注)出だしの「なぜ1」は「なぜ2」以降の分析に影響しますので、非常に重要です。

 2)「現象」や「なぜ」のところに書く文章は、短く簡素に「○○が○○した」という形にする。
  (主語はひとつ。主語と述語をはっきり書く。)
  また、主人公があるなら「誰が」を明確にしておくこと。
  
 3)現象の正確な把握(アバウトな表現を排除する。5W1Hを明確にする。)
  ・現象の捉え方(書き方)が重要!
   「キズ不良が発生した」はダメ! どんなタイプのキズなのか?
引っ掻きキズ放り込みキズ摺りキズ
打痕キズ横キズ押しキズ
     a) どこの工程で、どの機械で発生したのか?
     b) だれが作業していたのか?
     c) どの程度の量が発生しているのか?
     d) 発生頻度は?周期的か?どの時期か?(季節、時間、始業直後など)
     e) そのときの周囲環境は?(温度、湿度)
  ・言葉の意味の重要性
   現象を良く調べ、言葉の意味をあいまいにしない。
   例えば語尾によって、要因・対策が変わってしまう。
    例)「恒温槽の温度が上がらないこと」に対し
     a) 槽の温度が「低かった」
     b) 槽の温度が「低くなった」
     c) 槽の温度が「低いときがある」
   いかに現場の現象を具体的に把握することが重要かがわかる。

 4)なぜなぜ分析を終了した後で、必ず最後の「なぜ」の部分から「現象」まで遡る形で
  読んでいくことにより、理論的に正しいか確認する。

  末端から「○○した、(だ)から○○」というように、逆から遡るように読んでいく。
  (終了してからでなく、一つ掘り下げる毎に確認しながら進めると効率がよい。)

 「(だ)から」を接続詞にして遡ったとき、スジが通っていればOK。理屈どおりでなかったら
  要因に抜けがあるか、スジ違いが予想される


 5)並列関係にある要因を漏れなくあげる。
  その前の事象に対して、要因が完全に挙げられているかどうかということを、その逆を考えて
  チェックする。
  並列に挙げた要因が全て発生しなければ、その前に書かれている事象は発生しないかを
  チェックする。

  「一直線のなぜなぜ」はまずありえない。逆に「なぜ1」にたくさん枝分かれがあるのは、
  現象が絞り込まれていない。
  また逆に、その「なぜ」が発生したら、必ず「その一つ前のなぜ」は発生するのかを、
  絶えず考えながら進めるのがよい。もし違う場合は、矢線(→)で繋いではいけない。
  間にもう一つ要因がある場合や、違う場所に繋がる場合がある。


 6)再発防止策につながるような要因が出てくるところまで「なぜ」を続ける。
  5回を目処に掘り下げるが、適切な要因が出ない場合は無理に続ける必要はない。
  (末端の原因の裏返しが、再発防止策になる。)
  最後の原因は確実で効率的な歯止めがかけられる要因でなければならない。

 7)正常からズレている(異常)と思われることだけを書く。
  「なぜ」の欄に「装置がフル稼働している」や「仕事量が多い」などの異常ではない状態を書くと、
  対策が「受注を制限する」や「社長が悪い」というような変な方向に行ってしまう。

 8)人間の心理面への原因追求は避ける。(ボーッとしていた、疲れていた、といった事柄)
   心理面への追求は避け、再発防止策がしっかり打てる設備面や管理のしくみに対して、
  「なぜ」のほこさきを向ける。
  (ボーッとしていても異常に気付ける、発見できる仕組みを考える。)→予防処置の方向へ
  ただし、最終的に「その本人の問題」に矛先が向かうのは仕方がない場合がある。
  これは決して、この人たちの責任追及をするためではなく、この人たちの作業の仕方・手順や
  管理のあり方、表示のしかた、モノの置き方、設備のあり方、教育のあり方などにメスを
  入れるために、クローズアップしただけのことです。
  決して人を追い詰めるようなことを絶対にしてはなりません。

 9)文中に「〜が悪い」、「〜が不十分」という言葉は使わない。
  「材料が悪い」ではなく具体的に、「材料の耐熱温度が低かった」などとする。
  比較の対象を明確にし、基準や正常に対して、どう異常なのかを問題にする!

 10)ヒューマンエラーの「なぜなぜ分析」のコツ
   以下のようなキーワードに持っていくとよい。

    〜に気付かなかった。(やってしまった本人の問題)
    〜に気付けなかった。(やってしまった本人の問題)
    〜に気付きにくかった。(周囲の人たち(特に監督者)の問題の可能性あり)

    〜にもかかわらず〜してしまった。(やってしまった本人の問題)
    〜と見まちがえた。(やってしまった本人の問題)
    〜と聞きまちがえた。(やってしまった本人の問題か、周囲環境の問題の可能性あり)
    〜と言いまちがえた。(やってしまった本人の問題)
    〜と判断してしまった。(やってしまった本人の問題)
    〜しても問題にならなかった。(仕事の仕組みの問題の可能性あり)
    〜しても困らなかった。(仕事の仕組みの問題の可能性あり)
  「やらなかったのか」「間違えたのか」「気付かなかったのか」「気付けなかったのか」など。

   a)「情報そのものが悪い」(情報)、「インプット情報のもらい方」(受取)
   b)「判断基準や気付き易さの問題」「判断の間違い。」(判断)
    「行動の仕方や行動の間違い。」(行動)
   などの間違いを探すようにすればよい。
  「情報作成段階」「情報受取段階」「判断段階」「行動段階」の、どの段階で人為ミスが
  起こったのかを考えるとよい。
  また、エラーをしてしまった本人の問題だけでなく、インプット情報の問題や、周囲の人たちや、
  管理・監督者の問題が多い。


 11)対策案の評価と実施について
  評価(OK/NG)は、現場・現物でしっかり検証して決定する。
   なぜなぜ分析で得られた対策は効果、リスク、費用などを評価した上で、優先順位を決め、
   計画書を作成して確実に実行する。

 12)発生した事象に対する恒久対策だけでなく、類似品への水平展開、上位のシステムや
   仕組みに原因がないか、視野を広げて考えることも重要である。→予防処置の方向へ

   出てきた原因が「根本原因」かどうか、再度クールダウンして考えてみることも重要。
   (なにか違うと思ったら見直す。)
  備考)「根本原因」とは、様々なトラブルの原因を発生させていると考えられる「背景にある
     少数の基本的な欠陥」をいう。例えば、人材不足、信頼性試験が不十分、フィールドを
     想定した妥当性の検証不足、プロセスアプローチの不足、内部コミュニケーション不足、
     職場の視環境が悪い(暗い、グレアなど)など。

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【参考資料】
 1) 真因分析の10則(なぜなぜ分析の10則) 著者:管理人(MORIO)
 2) なぜなぜ分析の「最低限これだけは絶対に必要なポイント」 著者:管理人(MORIO)
 3)「なぜなぜ分析とは」.pdf(479KB) 著者:管理人(MORIO)
 4) ヒューマンエラー(人為ミス)に対する「なぜなぜ分析」のコツ 著者:管理人(MORIO)
 5)なぜなぜ分析の落とし穴(なぜうまくいかないのか?) 著者:管理人(MORIO)
 6) なぜなぜ分析シート.xls(49KB) 作者:管理人(MORIO)
 7) 設計部門(開発部門)の「なぜなぜ分析」について 作者:管理人(MORIO)

【推薦書籍】
 1)「なぜなぜ分析 徹底活用術」著者:小倉 仁志(JIPMソリューション)
   「なぜなぜ分析」の入門に最適な書籍です。初級者にも分かりやすい!
 2)「なぜなぜ分析習得の7ステップ 真の原因をつかめ!」著者:小松 正(JIPMソリューション)
   「なぜなぜ分析」の中級者に最適な書籍です。入門者にキッチリ教える時などに利用できます。
 3)「なぜなぜ分析 実践編」著者:小倉 仁志(日経BP社)
   何回か実施した経験のある人が、どうも上手くいかないと思ったとき、あるいは間違った
   なぜなぜになることが多いと感じたとき、この本は良い指南書になると思います。

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